60歳で定年退職を迎えたあと、厚生年金の受給開始年齢が段階的に引き上げられていることから、60歳代前半は継続雇用制度や転職などで働き続けるケースが大半でしょう。とはいえ、収入ダウンは避けられないと思われ、赤字家計とならないためにも家計支出の見直しは不可欠です。使いすぎていた支出項目を洗い出すのはもちろん、保険にも今一度目を向けましょう。保険料が家計に負担をかけないようにしなければなりません。
まだ学生の子どもがいるというケースでないかぎり、大きな死亡保障は必要ありません。基本的に、数100万円程度の死亡保障と入院日額5,000円程度の医療保障、それに災害に遭ったときの補償が備わっていれば、まず安心。加入中の保険を減額して継続すればOKというケースが多いでしょう。ところが、新たに入りたいというニーズも少なくありません。誰でも入れる、病気があっても入れるなど熟年をターゲットにした商品が人気ですが、保険料が割高だったり保障に制限があったりするので、内容をよく確認し、安易に飛びつかないようにしましょう。
まとまった「退職金」を受け取ったら、今後の生活のために1円もムダなく運用したいと考える人は多いでしょう。退職金は、老後生活を豊かに過ごすための大切な虎の子ですから、使い道には慎重になりたいものです。住宅ローンが残っている場合は、リタイア後の返済負担を軽くするために、退職金の一部を繰上げ返済に回すことを考えましょう。
先々の老後資金が不足するのではとの不安から、個人年金保険を検討するケースも少なくありません。なかでも、国内外の株式や債券で運用する「変額年金」「外貨建て年金」などに大きな金額を注ぎ込むケースも多くなっています。
商品名に「年金」とつくため安心感を誘いますが、これらの多くは決して元本割れリスクと無縁ではありません。内容をよく理解し納得したうえでないと、先々後悔することもあり得ます。大切な虎の子を守るためにも、説明の内容を理解できる基礎知識の習得が求められます。説明されてもよくわからない場合は、手を出さないのが賢明でしょう。
- リタイア後の家計に保険料負担が重くならないよう、加入中の保険を減額する
- 熟年をターゲットにした保険にはすぐに飛びつかない
- 退職金で個人年金に加入する場合、内容がよく理解できなければやめておく

1959年兵庫県生まれ。
1982年同志社大学卒業後、日興證券に入社、証券営業に携わる。1988年独立系FP会社株式会社エムエムアイに入社、ファイナンシャル・プランナーとなる。1993年フリーでの活動をスタート。生活者対象のファイナンシャル・プランニングを担当するほか、執筆、講演活動もこなす。現在、FPサービス会社株式会社生活設計塾クルー取締役、個人事務所リアサイト代表。日本FP協会会員CFP(サーティファイド・ファイナンシャル・プランナー)一級FP技能士。
著書は、『知ってトクする生命保険と個人年金の上手な掛け方選び方』(日本実業出版社)など。